数寄者の戯れ
- 智史 廣瀬
- 7月15日
- 読了時間: 3分
更新日:7月16日

先日、兵庫支部の大先輩の訃報に接しました。
既に卒寿を超えておられ、ここ1~2年支部会にもお見えになっていなかったので、ご心配申し上げていたのですが、お聞きした時にはしんとした気持ちになりました。
お家に数回お招きいただき、数々の名品を見せていただきました。
最初に伺ったときにお見せいただいたのは、特別重要刀剣の備前正系。そして誰でも知っている戦国大名の蔵刀の福岡一文字など。
二度目にお伺いした時には、この世に一本しかないといわれる備前著名工の短刀。重要文化財の相州物。重要美術品指定されている有名刀よりも素晴らしいと思える末備前など、頭がクラクラする思いでした。
その大先輩に刀を教授された高名な先生(故人)のお話なども興味深く聞かせていただきました。
大先輩が年に一度主催される支部会は、非常に面白いもので、先にあげたような堂々たる銘品の中に、少し茶目っ気を効かせて、脇物を出されるのです。
この脇物が素晴らしい。
それこそ脇とは思えない素晴らしい出来ですが、特別保存刀剣。重要にするつもりも無さそうな雰囲気なのです(出せば間違いないと僕なんかはおもってしまうのですけれど)
思わずその刀工のファンになってしまい、様々な刀屋さんで同工の作を見せてもらうのですが、とてもじゃないけれどそこまで素晴らしい作品には出会えません。
「どうだい?格が上がらないという刀工にも、素晴らしい作品があるだろう?」と問いかけられているようで、単に名刀を集めるのではなく、日本刀という文化に対しての深い愛情を感じました。
兵庫支部では年度末に、会員が持っている刀を持ち寄る会があるのですが、ある時、よりによって僕の刀が大先輩の刀の隣に置かれたことがありました。
大先輩のお持ちになった脇差は、少し脇に逸れた刀工ながらも地金の詰みかた、刃文の冴えなど、確実に大名の御殿差し。
対して僕の刀は無名(銘はあります)の新々刀。たまたま伺った刀屋さんに前日に入ってきた物。真面目で篤実な作り方に一目ぼれして買ったものでした。
大先輩が、僕の刀を取り、じっとご覧になっているときは、背筋が凍る思いでしたね。
そして、しばらくご覧になった後、刀を見つめながら、
「うん、ええ刀や」
と力のある声で仰ってくださいました。
なんというか、天にも昇る気持ちでしたね。
忘年会で同じテーブルになり、「最近観て良かったのは何かね?」と聞かれて、「正倉院の物なんですが…」というと、「ガハハ!それは比べたらあかんわ!」と豪快に笑われていたのも懐かしい。
良い品は、良い人の元に集まるのだな。と心から思わせてくれる方でした。
ご冥福をお祈り申し上げます
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